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 最近、10年以上前につとめていたプロフェッショナル組織での経験を思い出すことがあります。ひとつは、私が新しいプロジェクトの形態を提案した時にトップからもらったアドバイスです。

 当時、コンサルティング会社では戦略と組織をつくる所まではやりましたが、その後それを実践するマネジャーのスキル開発まではやっていませんでした。ちょうど私は入社して2年くらいで、通常のコンサルティングではあまり成果があがらず、この仕事には向かないようだから転職先を探さねばと思っていた頃、たまたま大きなクライアント企業から「スキル開発もやってくれれば良いのだが」という話を聞きました。私自身、そうしたことをやりたいと思っていたこともあって、すぐその機会にとびつき、新しいプロジェクトの形態を提案しました。(実はそれまでにもそうした話はかなり社内で出ていたのですが、やる人がいなかったようです) 

 この提案をトップのミーティングで発表したあと、一番サポートしてくれていたトップからもらったアドバイスが「あまり皆の意見をいれるな。そうすると、あたりさわりのないものになるから」というものでした。これは私にとってはとても印象に残るアドバイスでした。つまり、いろいろな側面からこうした方が良いという人がいるが、その意見を皆いれようとすると中途半端なものになってしまうということだったのです。  大体新しいアイディアは「突き抜ける」というか、「とんがった」所があるほうが良いということなのです。皆の意見をいれたものは、結局ユニークさがなくなってしまい、既存のプロジェクトに似てしまい、新しさがなくなってしまうということだと思います。 

   このアドバイスを聞いた時はあまりピンと来なくて、「そうか、皆の意見を聞かなくても、思ったとおりにやれば良いのだな」という程度でした。しかし、このコメントの重要性は今になってみると、良くわかるような気がします。つまり、新しいアイディアが組織内で出てきても、周囲がいろいろコメントしていって、結局新しさがないものになってしまうことが多いということだと思います。

  私のこの事例は、大それた「イノベーション」というほどのことではないですが、新しいものは何しろやってみる、それもやりたいという人にやらせてみて、あまりまわりはいろいろ言わないのがコツだということに通じると思います。

そういう点でいうと、私には、新しいことは、「ピンボール・マシーン」のようだと思います。(というより、自分でやってきたことがといっても良いかもしれません)。 今ではあまり見かけないかもしれませんが、昔はゲームセンターにあったものです。お金をいれると、銀色のボールが出て、それがあちこちぶつかりながら(横にあるボタンでいろいろそれを操作するのですが)、あっちへいったりこっちへいったりするものです。ほとんどはある程度ぶつかった後で下にある「はずれ!」の穴にいってしまうのですが、時々は「あたり!」のスロットに入ることもあります。

 新しいこともこんな感じなのではないか、と一番イメージに近いような気がします。あちこちぶつかっているうちに、アイディアがさらによくなったり、くじけたりするというイメージです。(今検討中のアイディアがまさにこれで、あちこちにぶつかってアイディアが次第に絞り込まれたり、新しい仮説が出てきたりしています。このプロセスはとてもエキサイティングで、時間を忘れます)

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    • Ben Matsuzaki
    • 2008年 4月 17日

    時間をかけて「意見を集約」する過程で、とんがったアイデアの角がとれてしまうのは、政治の世界でもビジネスでもよく見られます。事業が大きく成長する場合には、必ず「イニシアティブ」が必要になりますが、そこには「リーダーシップ」や「オーナーシップ」さらに「とことんん考え抜いてやりぬく個人」が必要ですね。各方面で55体制が終焉して、ブレークスルーが重要になっている時代には、まさに必須のことだと思います。

    もっとも徹底的に考え抜いている個人がすべてを決めることで、新しい地平線が開けることが多々あります。以前NHKの「プロフェッショナル」に登場したキリンベバレッジの佐藤氏が同様のことを語っていました。

    私も今まさに、寝てもさめても考えているプロジェクトがあり、まさにイニシアティブをとっていますが、さて数ヵ月後にどうなっているか。

    • yishikura
    • 2008年 4月 19日

    松崎さん、石倉です。コメントありがとうございました。
    オーナーシップは本当に大事だと思います。(リーダーシップとはちょっと違うように感じます) いくら良いアイディアでも「これは自分のものだ」と思って自分の生活を賭けるくらいの気概でやる人がいないと、何も進まないと思います。そういう点で、困難にもめげず何かを初めてやった人、やりとげた人は凄い!と思います。ビジネスの分野でも私は創業者は違うと感じることが多いです。

    個人の立場からすると、そういうものを見つけられたら、すばらしいと思います。もちろんなかなかうまくいかない、パッションが空回りしてしまうということもありますが、オーナーシップを本当にもてるものに遭遇することはすばらしいことだとと思います。がんばってください!

    • 新良
    • 2008年 4月 21日

    松崎さん

    Darden Business Schoolを2007年に卒業した新良です。

    アメリカと日本の企業経営を語るときに、ボトムアップ/トップダウンで特徴的に語られることがあります。ある人は日本企業はボトムアップであるといい、それを信じていたのですが、留学先の教授に「日本企業こそがボトムアップだ。社内のいかなる判断でも最終決裁は上席のものがするだろう?」と言われ、困ってしまいました。

    今回、オーナーシップという言葉を聞いて、謎が解けました。

    アメリカの企業は、どの従業員もオーナーシップがはっきりしています。ここでいうオーナーシップは、担当者が守備範囲についてはすべての裁量を持つということです。対して日本の企業は、どの従業員も役員も裁量権は共有されています。
    アメリカの企業の場合、組織のどの階層にいても一人の判断で決断し、行動することができます。企業のトップも、若手も一人で何かを変えるのです。ただ、組織の下層にいると狭い守備範囲の中でしか、判断も行動もできないため、会社に大きく影響を及ぼすような変革は、どうしても経営の中心を守備範囲とするトップから出てくることが多くなってしまう。これが米国企業がトップダウンと映る要因です。第三者から見て、目に付くような行動は、トップダウンのものに限られてしまうのです。どんなレベルにあってもそのインパクトの大きさを無視すれば、イノベーションを起こすことは可能で、このアングルで捉えればボトムアップといえます。
    日本の企業の場合、守備範囲が比較的緩やかに定義されています。経験が浅くとも、一つ一つ決裁をとるプロセスをとれば、最終的にトップまで提案を届けることが可能です。末端で着想された、経営にインパクトを与えるようなアイデアが、形になりうる組織デザインになっており、この点でボトムアップと言えます。ただし、担当一人で決められる範囲は限られており、より上席のものが決裁をするという点に着目すると、トップダウンということができます。つまり誰が着想したかという点で見れば、ボトムアップですし、最終決断をした人が誰かという観点で見れば、トップダウンです。

    松崎さんは、
    「『リーダーシップ』や『オーナーシップ』さらに『とことんん考え抜いてやりぬく個人』が必要」とコメントされています。イノベーションを高い頻度で起こし続けるには、特にこうした要素が必要なのでしょう。またオーナーシップがはっきりすれば、おのずと担当者はとことん考えるようになります。

    トップダウン/ボトムアップで整理しようとすると迷路に入ってしまいますが、オーナーシップを軸に考えると説明ができます。松崎さんのお蔭で、ずっと整理できずすっきりしなかったものが、私としては明らかになったので、感謝の気持ちを添えてコメントさせていただきました。

    スタートアップの会社においては、トップと末端の守備範囲にあまり差がないので、オーナーシップをはっきりさせるアメリカ型の方が、組織としては成果が上がりやすいのではないでしょうか。

    • yishikura
    • 2008年 4月 23日

    石倉です。こういう形でコメントがコメントにつながっていくと良いですね。こうしたフォーラム的なものをやりたい(ケース討論もこんな感じですが)それをネットでできるのでは、というのがブログを始めたひとつのきっかけでもあります。

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