競争力コースあれこれ
ICSの競争力コースはあとクラスを一回残すだけになりました。このコースは、私が今までICSで担当したコースの中では、一番私にとって学ぶ点が多く、有意義なコースになりつつあります。それには、いくつかの理由があります。
1) このコースで扱っているテーマが単なる「競争力」やランキングではなく、企業、国、都市、大陸、そして世界の経済成長と持続をいかに実現していくか、という今私たちが直面している課題を扱っていること
2) こうした課題を解決していくために、ダイヤモンド・モデルという枠組みを用いて、問題を分析し、それを解決するために、規模のさまざまな企業、政府、大学や研究機関、各種のサービス提供機関、団体など多様な組織が何をすべきか、を考えていること
3) 問題の多層性と参加するプレイヤーの多様性や数が非常に多い統合的なテーマでありプロジェクトであること
4) ICSという国籍、経歴、実務経験、いずれも多様な30代はじめの大学院生と英語で議論する「場」が理想的であること
5) クラスでは、見方や意見の多様性を反映するために、反対意見を歓迎し、学生間で議論をぶつけあう、実際に利害が対立する可能性がある状況での行動を試すために、組織を代表する人になってロールプレイをしてみる、など、いろいろな試みができること
6) ICSを卒業した後、自分の国や外国で実際に解決案を実践する可能性があることなどからです。
すでに10回クラスをしているので、私の役割は質問を投げかけること、具体的でない発言はフォローアップをして具体性を高めること、ロジックのつながりが明確でないコメントには追加の質問をしてそれを明確にすること、新しい質問を投げることによって議論を先にすすめること、など基本的には交通整理をするだけです。最近では、私が途中でまとめたり、しなくても、お互いに意見が違うとどんどん反論したり、新たな視点が出たりが自然に進みます。議論が沸騰して終る時間になっても議論が続くことも多々あります。
このコースはハーバード大学のマイケル・ポーター教授がはじめたコースであり、ICTを駆使しています。 東京でやっていても、ハーバードで行ったクラスのビデオを一部見せることもあります。Costa Ricaの元大統領、Estoniaの現首相、インドネシアの貿易担当大臣とのテレビ会議などのビデオやポーター教授の講義の一部も見せられます。
ICSでも5月6日には、ゲストを招いた特別セッションと通常クラスのダブル・セッションをしました。(何と5月6日の代休日、それも天気が良く、さわやかで外で遊びたいような気持ちがよい日でした!)
朝8時半からの通常のクラスでは「大陸(Continent)の経済開発戦略」というテーマでEUの統合ケースを議論し、アジアとの比較などをしました。
夕方の特別セッションでは、ICSでもフィンランドのJorma Julin大使と内閣特別顧問の黒川清さん、昨年このコースをとり、現在商社につとめているICSの卒業生をゲストにお招きして、クラスが始まりました。
フィンランドと日本は、いずれもこのコースの最初の頃に”Finland and Nokia” “Car Navigation Systems Industry: Sustaining Competitive Advantage”として登場しています。特に、フィンランドはここ15年くらいの間に飛躍的な成長をした国ですし、教育制度でも定評があり、ノキアという携帯業界での世界的リーダーとオープン・システムのイノベーションでも知られています。日本のカーナビ業界は世界的な力をもっていましたが、今大きな転回点にあるという点で興味深い事例でもありますし、日本のイノベーション、環境、エネルギーなどにおける力を考える上でも、この2人のゲストの組み合わせは興味深いものでした。同時に、商社につとめる卒業生には、企業人も、国や都市、大陸の戦略(一般には政府の仕事と思われていますが)立案に参加し、解決案の実行をすべきだというこのコース(そして私自身)の思いを、若いビジネスマンとしてどう考えるか、どう実践するか、を自分の経験から話してもらいたいと思いました。
学生間の議論―グローバル企業のトップだったら、新しい研究開発拠点をフィンランドか日本のどちらにおくか、それはなぜかという仮想の質問から始まったーの後、Julin氏、黒川氏、卒業生に短いプレゼンテーションをしていただき、その後質疑応答をしました。時間が全く足りないほどの質問が出て、その後、場所をオープン・スペースに移してやったワイン・セッション(2週間ほど前にワイン・クラスターのケースをしたので、実際、フランス、イタリア、カリフォルニア、オーストラリア、チリのワインを試したのです)でも、ゲストと学生との話はずっと続いていました。
ゲストからは当日の資料や関連資料をいただき、皆イントラネットにはのせてあります。(本当はセッションのビデオも資料も公開したい所ですが)
そしてその後はじめての昨日のクラスで、学生の印象や感想を聞きました。意見も多様、印象に残った点も多彩で、とても興味深く、企画をした私にとっては、うれしいものでした。たとえば、ゲストの視点の短期と長期の差、課題のレベル、イノベーションの重要性・教育の重要性・いかに起業家を見つけるか、開発するか、大学の役割など、学生のコメントは、ゲストのコメントや国を比較・対照したり、全く新しい視点から見たりなど、さすがに経歴などが多様だからこうしたコメントが出るのだなあと思わせられるものでした。クラスでやっていることを将来実践できる学生がたくさんいることにもとても勇気付けられました。
クラス(インドネシアのケースをしました)の最後に、3年ほど前にこのコースをとったインドネシアの卒業生が、コンサルティングなどの仕事(元コンサルティングの経験が長い)ではなく、母国(それも都市地域ではありません)に帰って、国の経済開発、貧困からの脱皮のために働いていることを紹介しました。“I am very proud of him. Whatever career you pursue, I hope you will have high aspiration and will make things happen.” といっていたら、私がこうした機会を持っていることに思わず感動してしまいました。
コースでも、議論や講義だけでなく、実際にその仕事をしていらっしゃる方々に来ていただくのは何といっても迫力が違います。学生(私も聞きたいことがたくさんあるので聞きますが)の質問も鋭いものが多く、それに真剣に答えていただいたことはとてもすばらしいことだと思いました。屋「外」で遊びたいようにさわやかな6日でしたが、室「内」でフィンランドや日本、アジアという広い世界の課題を考えるのもまたすばらしいことでした。