グローバル化が進み、24時間17日体制になっても(というよりなったためといえるかもしれません)、新しい場所に行ったり、新しい人と会ったり、接触したりという機会は限りなく増えています。「世界級キャリアのつくり方」でも、最近の事業戦略セミナー、イノベーション関係のセミナーなどでも、場を変えること、多様な意見に触れること、多様な経験をすること、多様性やオープン・システムの重要性を指摘しています。

 個人について考えると、ネットの時代、こうした機会は誰にでも開かれる可能性があり、それをどう使うかが課題であると私は考えてきました。どう使うか、は、何しろそうした経験をたくさん積むこと、「場数」を踏む、多様なものと触れる頻度を多くする、一回毎のリスクやハードルを低くして、どんどん試してみることだと確信していました。多様な場で、いろいろな人とどうつきあうか、どんな話をするか、ネット世界を活用するヒントは、「場数」「慣れ」だと思っていました。つまり、そういう機会があればあるほど、最初は何がなんだかさっぱりわからなくても、だんだん慣れて、そういう場での行動の仕方がわかってくる、だから、何しろいろいろやってみると良い、実験の頻度を上げれば良いと確信していたのです。

 しかし最近、日本でも外国でも、いろいろな人に会う、話を聞くというすばらしい機会が開かれている(頻度をふやすことのできる場にいる、場慣れできる)にもかかわらず、そしてネットという手段がでてきているにもかかわらず、そうした機会を活用していない人がかなりいることに気がつきました。

 こうした話をしていたら、ある人が、「機会を活用するためには、エネルギーが必要だ」といったのです。そこで思い出したのが、「働き者」、「ネットをワークさせる」ことの重要性です。 

「働き者」というのは「ウェブ進化論」そして、もうすぐ出る「ウェブ時代を行く」の著者である梅田望夫さんが書いた、ビジネス雑誌「THINK」の2006年夏号の「ネット世界の難題はオプティミズムで乗り切る」というコラムからの引用です。ここで梅田さんは、

「社会の成功の軸が、今までの『頭のいい人』対『頭の悪い人』や『記憶力のいい人』対『記憶力の悪い人』ではなく、『働き者』対『怠け者』になる」といっています。「ネットの世界やシリコンバレーのような社会で成功できる資質は『怠け者』に対する『働き者』という言葉が最も本質を表すと思う。。。」と書いてありました。私はこれを読んだ時、さすが!と思って、それからセミナーなどでよく引用させていただいています。

  同じように、「ネットはワークさせないと」といっていたのはe-woman社長の佐々木かをりさんです。佐々木さんは、いろいろな所で接触がある私の友人の一人なのですが、「会合で名刺交換しても名刺がたまるばかり」「皆ネットワークというけれど本当にネットワークで良いのか」など私がいっている時に、「ネットはワークさせないとだめなのです」という趣旨のことをいっていました。これもうまいことをいうなあと感心して、それから時々引用させていただいています。   

 一方、私の周囲には、そういう点で「働き者」がかなりいます。そういう人と一緒に活動していると、どんどん世界が広くなり、いろいろな人に紹介していただいたり、分野が広がっていきます。すばらしいと私が思う人は、年齢や国籍、性別、履歴などにかかわらず、皆、好奇心が旺盛で、積極的にいろいろな人と交流し、またそのコンタクトを維持するにもかなりエネルギーを使っているようです。それはネットでもリアルでも同様です。

 ここ数年、知り合いになり、一緒に活動をしている人の中では、「世界級キャリアのつくり方」をご一緒に書いた黒川清さんが「超働き者」です。本を書く以前も、世界での知名度、活動の広さなどから、すごいとは思っていましたが、実際に会議や活動をご一緒してみると、その「働き者」ぶりは桁違いです。どうしてあれだけエネルギーがあるのか、と思うくらい、短期間に世界を飛び回り、どこへでも行く、世界であれだけ有名人であるにもかかわらず、どんどん新しい人に接触し、自分で何でも見に行くという実行力とパワーは、側で見ていると圧倒され、かつInspireされます。

 10月の日経新聞「私の履歴書」でも、青木昌彦さんがどれだけいろいろなことをしてきたか、新しいことにチャレンジしてきたか、そして今もその途上であることが明らかでした。(ほとんどは私が全く知らないことでしたが。。。)  

 国の競争力や成長も、周囲にどんな国があるかによって大きな影響を受けます。私が専門としている競争力のコースーマイケル・ポーター教授が創始者で新しい分野を開こうとしているーでは、エストニアとチリの事例を使って、規模、経済状況などが同じレベルだったエストニアがなぜチリにその後の経済成長で大きく差をつけたかという理由のひとつに、周囲にある国の違い(エストニアは北欧に近い)をあげています。

 国だけでなく、人も、周囲にどんな人やグループがいるか、どんな組織で活動するによって、姿勢、活動、意欲などは異なると思います。 なるべく、やる気があり、積極的、何でも試してみる、新しいものへの好奇心があり、失敗を恐れない、新しいチャレンジを奨励してくれる人、また自分で実践している「働き者」と一緒に仕事や活動をするのが一番だと思います。