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 この本を読み終わった後、なぜかはっきりとした理由がわからないまま、ただただ涙が流れるという時間が数分続きました。感動と呆然(呆然と言う言葉が適当かわかりませんが)が一緒になったようでした。

 それは、第5定理の「大人の流儀」が直接の原因です。苦しい時こそ「大人」が皆を励ます。若い人のやり方を尊重する。そして「大人」が自ら、自分の好きなことを徹底的に全うしようとしていると書いてあったからです。私自身、明るく前向き、どんな時でも良い面を探す、少しでも前向きにやろうとしている人には限りない応援をする、アメリカ(ある程度の期間住んでいた外国はアメリカなので)の心を実際体験し、多くの局面でそれに助けられて、立ち直ることができた経験があるので、こうした「大人」のいるシリコンバレーのすばらしさを実感できたからです。

  Steve Jobsのスピーチは本当にすばらしく、私自身、何度も読み、引用していますが、他にも、シリコンバレーのエンジニアやベンチャー・キャピタリストの言葉自体に感激し、心に強く響いたからだと思います。

  日本でもこうした人はいますし、実際私の周囲にも、常に前向き、いつでも見てくれて、ちょっとした言葉で激励してくれる人が数人います。そういう人にひきずられて何とかやってきたという気も強くしています。同時に、私もそうした人の一人になりたいなあと思っているので、「大人の流儀」を読み、とても感動かつ呆然としてしまったのだと思います。 

  2番目に、この本全体で、私自身とても興味深く、なるほどこういうことだったのかと納得したのは、技術・テクノロジーに関する洞察です。テクノロジーは逆行することのない大きな社会の流れ、世界をよりよくする、世界の誰もが平等な機会を得られるようにする強力な手段、最近のICTは特に権威に対抗する手段であるなどが、「技術」を原点とした考え方、「技術者の眼」という定理でまとめられていたことがとても新鮮でした。

  技術者はファクト・数字でものを言う、プロダクトにこだわる、実行する、細部にこだわるという話も同様で、それぞれ今の時代には不可欠だと思っていたのですが、「技術・テクノロジー」とくくってみるとこうなるのか、と納得してしまいました。  

  そしてこうした技術の力、アントレプレナーシップやチーム力を具現化している組織としてのグーグルの話は、ネットという革命的な時代にあって、可能性を最大限試そうとしている組織なのだと前より少しわかったような気がしました。

  こうした観点で科学や技術をとらえる姿勢があまり日本にはないような気もするので、こうした技術の見方は特に重要だと思いました。この本を読んで、科学や技術がいかにこれから大切か、そしてそれを日本(だけではありませんが)の将来の世代にいかに伝えるかがさらに大きなテーマになってきました。    

  3つ目の感動は、ビジョナリーの「言葉」を中心として、その背景にある思考や発想を明らかにするという梅田さんがこの本を書いたアプローチ自体のすばらしさです。私は、言葉への感度が、梅田さんのようにはありませんでした。私自身、人生の大きなイベントだったと思える経験を思い出すと、その時の空の青さ、新緑のまぶしさなど、「光景」が鮮やかに思い浮かんでくることが多かったので、「言葉」から衝撃的とも思えるヒントを得るという梅田さんのこの本のアプローチがとても興味深く思えました。この本を読んでいると、どれだけビジョナリーの言葉に梅田さんが感動したか、そしてそれを力にして、各種の活動をしてきたか、という「静かなダイナミックさ」が感じられます。  

  今までの本でもそうですが、私が梅田さんをすばらしいと思うのは、ただシリコンバレーのことを書いているのではなく、それが歴史の流れや世界という広い場の中で、どういう意味を持つのか、どう体系化して考えたら良いのか、特に、どんな点が日本と違うのか(たとえば「チームワーク」に関する概念の違い)、同じなのか、そしてそれはなぜなのか、そして私たちは何をしたら良いのか、を明確に書いている所です。私自身も何となくシリコンバレーは(住んだ経験がないので詳しくはもちろんわかりませんが)、競争が激しいが、元気が出る、エンジニアのパラダイス、流動的などと断片的には感じたり考えたりしているのですが、それを周囲に説明する時に、その人がわかるように、そして、何か行動に移せるように説明したり、書くことがとても難しいと感じています。その点、梅田さんの本はすばらしいと思います。 

  自からやりたいと思うことをやるという自発的な行動、情報を広く共有し、皆で合意する、自分しかできないことをやろう、常により良い世界をつくろうなどという本書から私が受けたメッセージはとても力強いものです。一方、今私の周囲にいる人を考えてみると、やらされたことをやっている人や、「常により良い世界をつくろう、自分らしく生きよう」とするより、失敗のないように、という人がかなり見られるのは残念です。人生は他の人のものではない、自分のものだから、好きなことをとことん探して、徹底的にやろうという心は、年齢、国籍、経歴に限らず、誰でもが持ち続けられる姿勢であり、心だと思います。それを継続するには、多大な努力、規律、勤勉が必要ですが、はじめる前からあきらめる必要は全くないと思います。(もちろんこうした心や姿勢で、パッションを持ち、興奮してーそれが周囲にまで伝わるような勢いでーいろいろな仕事や活動をしている人も、私の周囲にはいます!) 

  少しでも元気を出すために、この本は若い人に限らず読んでいただきたいと思います。 

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コメント

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  • コメント (6)

  1. はじめまして。

    >>多大な努力、規律、勤勉が必要ですが、はじめる前からあきらめる必要は全くないと思います。

    今非常に苦しい状況の中で、とても心に響きました。同時にとても励まされました。ありがとうございました。

    • yishikura
    • 2008年 2月 28日

    ryuさん、石倉です。コメントありがとうございました。少しでも元気が出てまたやろう!という気になっていただけたのなら、うれしく思います。

    私自身、ryuさんのコメントを読んで、「こういう風に積極的にとらえてくれる人もいる!」「またがんばらなくては!」と思いました。

    • curonikeru
    • 2008年 3月 02日

    はじめまして
    わたくしは、ローテクをお勧めします。
    「ハイスペックの技術が制度イノベーションの妨げとなってはならない」
    http://blogs.yahoo.co.jp/curonikeru/3233182.html
    参照

    • yishikura
    • 2008年 3月 03日

    curonikeruさん、石倉です。コメントありがとうございました。なるほど、そういう視点もありますね。参考にさせていただきます。ご指摘ありがとうございました。

    • kondo
    • 2008年 3月 05日

    こんにちは。

    私は、「人々の善性を信じよ」というアイデアが好きです。IT業界で仕事をしているのですが、信頼されるサービスの提供は、まず、しっかり守ることが前提で、気がつくと減点主義で膠着しがちなんです。若くて才能のある人材がたくさんいるので、歯がゆい思いでいます。(若いから素直で染まりやすいんですね。)思いきって信じて、一歩先に進みたい!と思いました。

    • yishikura
    • 2008年 3月 06日

    kondoさん、石倉です。コメントありがとうございます。「あれが駄目、これが駄目」といっていると、限りなくマイナス指向、悲観主義になってしまうと思います。「できるのでは?」「どうやってやろう?」と考える、そして実行する所に知恵や力が発揮できると思います。細部をしっかりおさえるという「Detailへの細心の注意」は肝心ですが、「困難があっても自分は何とかできる、やる気がある」と信じる原点は自分なので(もちろんそうして応援してくれる人がいることは大事ですが)、それを信じて一歩踏み出すことが大事だと思います。

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