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 かなり前にいただいていた「ウェブで学ぶ」を良く読み、出ているウェブサイトのほとんども見てみたので、やっと「ウェブで学ぶ」そして「オープン・エデュケーション」について書こうという気になりました。最初にこのご本を読んだ時、とても興奮してしまい、しばしいろいろなことが手につかなくなってしまいました。それは、私がここ数年やりたいといってきたこと、初歩的ではありますが、いろいろ試してきたことが出ていて、それをはるかに超えた各種の試みが世界では(そして日本でも)すばらしい勢いで進んでいることを垣間見ることができたからです。読んでいる途中に感激してしまったことも何度かありました。 

 すべての人がどこでもいつでも知と情報を得られるようにすること、そしてウェブを使って世界のどこにいる誰とでもともに学ぶことができること、そして飯吉さんの言葉を借りれば、「無限の可能性を信じること」が「教育」の原点だと私は思っています。そしてインターネットは不特定多数無限大に信じられないほどの可能性をひらいています。グローバルな課題を考えることが最近多い中、長期的には世界を変える一番の原動力は新しい形の教育だという私の確信はここ数年どんどん強くなっています。このご本を読んで、教育の分野に、ウェブが活用されつつあり、それがとても大きな力になりそうだということを感じ、信じられないような可能性への扉が開かれつつある、2010年は「日本」におけるオープン・エデュケーション元年になる(世界では2001年が元年だと聞いたので)という確信はさらに強まりました。  

 このご本を読むだけでなく、ここに出てくるウェブサイトを若い人たちに見てもらいたい、そしてどれだけ世界に豊富な知識資産が公開されているか、それを自分のものにするために現時点ではなぜ英語が必要か、を実感として持っていただきたいと思います。英語ができないだけで、これだけ広く世界にあり、刻々と更新されている知識資産を活用できない、とはあまりに悲しいことだと思います。(これまで道具としての英語を強調してきましたが、もっと強調すべきだ、と反省しました)。その気にさえなれば、病院にいても、奥地にいても、何でも誰とでも学ぶことができる、というのは本当にすばらしいことだと思います。

  このご本には、いくつかとても興味深い指摘がありました。ひとつは、オープン・エデュケーションの3つの構成分野 オープン・コンテンツ、オープン・ナレッジ、オープン・テクノロジーという整理の仕方です。とてもわかりやすく、ここに出てくるウェブサイトを見てみると、いかにコンテンツが豊富にあるのか、またテクノロジーがどんどん進んでいるのか、そしてナレッジの部分にまだ大きな可能性が残されているのか、同時に、それぞれの人が持っているノウハウ・暗黙知をどうオープンにしていくか、というむずかしさを身にしみて感じました。私がProblem Solvingのコースを試行錯誤していく中で、数々の失敗をしてきたのは、まさにこのナレッジの部分が自分でやりながら、自分でもよくわかっていないからだと思いました。

  グローバルとローカルの話も興味深く読みました。梅田さんの「iPadがやってきたからもう一度ウェブの話をしよう」にも、シリコンバレーが特異点ではないか、という話が出ていましたが、「グローバル展開への強烈な意志」の方が特別なもの、という考え方は、印象的でした。オープン・エデュケーションの試みにおけるヨーロッパとアメリカのアプローチの比較も、他の分野でも見られることなので、なるほどと思いましたし、新しくおもしろそうなことはとりあえずやってみる、誰でも助けよう、こんなに良いものは皆に知らせて使ってもらおう、というアメリカ的な考え方は、そういわれてみれば全くそうだと思いました。

 私は、まずやってみたら?とか、あまり考えずにまず行動に移すスタイルなのですが、これを読んで、大学時代にこうした姿勢が強いアメリカ社会に直接ふれる機会をもったことが、今の自分のライフスタイルに大きな影響を与えているのだと感じました。 何でもすぐやってみないと気がすまない、とか、いろいろあっても何とかなる、という「いい加減」ともいえる私の姿勢は、若い時にアメリカに留学する機会を持ったことから来ているのではないか、と思いました。と同時に、必ずしも米国でなくても良いですが、若い時に外国で生活してみることが大きなインパクトを実感する良い方法だと思いますし、だから、若い人にどんどん外にいってほしいという気持ちはさらに強くなりました。

  この本に出てくるウェブサイトを見ていただければ、世界は限りなく広がっていて、それを誰でも手にいれることができることがわかっていただけると思います。といっても一人でするのはなかなか難しいので、「強制システム」や「閉じ込めのシステム」も考えていくことが必要ですが。。。 

  大きな方向としては、私がやりたいことが皆書かれているご本ですが、実際にやっていく上での課題がかなり明らかになりつつあることも少しわかってきました。オープン・エデュケーションは果てしない、すばらしい可能性を持っていますが、まだ「旅」は始まったばかりだと思いました。このチャンスにこの流れに直接参加したい、と痛切に思います。

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コメント

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  • コメント (4)

  1. 石倉先生

    大変ご示唆に富んだご感想・ご意見、どうもありがとうございました。僭越ながら、拙著ブログでも引用させていただきました(さきほど、少し加筆・修正しました)。是非、オープンエデュケーションに直接ご参加ください!

    飯吉

    P.S. やや専門的ですが、お役に立つようでしたら、こちらもご参照ください。
    http://mitpress.mit.edu/catalog/item/default.asp?ttype=2&tid=11309

    無料PDF版は、こちらです。
    http://mitpress.mit.edu/catalog/item/default.asp?ttype=2&tid=11309&mode=toc

  2. 石倉先生

    私も、本書を読んで大変興奮し、周りに話しをしまくっています。

    知のオープン化がこれだけ進み、知の集積がすごいスピードで進んでいくとなると、これはもう、とてつもなく大きな可能性を秘めていますね。

    先日読んだ”The Power of Pull” という書籍の中で、インターネットやソーシャル・メディアなどのテクノロジーを活用する事で、世界中から志を同じくする仲間を見つけ、共に学び合う事が重要だと指摘されていて、非常に共感しました。ナレッジをため込むのではなく、ナレッジのフローに身を置くべきだという指摘で、大変示唆深いです。

    以下、TechCrunchの紹介記事です。
    http://techcrunch.com/2010/04/24/power-of-pull-ito-vardi/

    • yishikura
    • 2010年 9月 23日

    飯吉さん、石倉です。コメントありがとうございました。まだ余裕がなく、飯吉さんのブログも加筆修正なさった後を見ていないのですが、急いでお礼をと思いました。ぜひ参加したいと思っています。一昨日黒川さんとセミナーで対談をしたのですが、飯吉さんの話が出ました。It’s a small world!と思います。

    • Yoko Ishikura
    • 2010年 9月 29日

    宗像さん、石倉です。コメントありがとうございました。返信が遅くて申し訳ありません。Tech Crunchの記事まだscanしただけなのですが、フローの話がとても興味深く、おもしろいと思いました。どんどん進んでいく、という点で、可能性は限りないと思います。

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