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  この7週間、カナダにいて(もう帰ってきました)、新しい本の原稿を書いていたのですが、本を書くことは、私にとってはとても大きなチャレンジです。以前、ボストンにいた時に、知り合いになった人が、「僕は、書くことが大好きで、一人で書いているととてもハッピーだ」といわれて、博士論文を書くという孤独な作業に挫折しそうだった私は「信じられない!」「仕事を間違った!」と思ったことがあります。また1年前くらいですが、日本の出版社の方に、「学者は常に何か書きためているのではないですか」といわれて愕然!としたことを覚えています。

  そう考えると、私はキャリアを間違ったとも思えるのですが、そういっていても、何かを書かなくてはならないので、私なりのやり方を少しずつ開拓してきました。 

  まずコラム的な短いものと、かなり長い論文的な記事(たとえば、ビジネスマン向けの雑誌などのまとまった記事)と、本とは全く違う性格のものだということです。1枚程度の短いもので単発ならば、その時思っていること、いいたいことをまとめることはそれほど大変な作業ではなくなってきました。(いいたいことがない場合は、そうはいきませんが)。もちろん、週1回、字数に制限がある、などという場合は、また別の難しさがあり、私にはとても大きなチャレンジです。(かなり少ない字数でまとめる、毎回新しいことを書くというのは限りないプレッシャーなので、私は新聞やオンラインでこうした活動を続けている人は限りなく尊敬しています!) 

  次に、かなり長い(10ページくらい)記事を書くのも、新しさ、ユニークさがあり、読者にわかりやすいものにしなくてはならないの、私の場合は、最初にアウトラインを考えてから、休み休み書き、何度も書き直していくので、なかなか大変です。私は、そもそも書くことが好きというわけではなく、ボストンの知り合いのような幸福感より、恐怖感、孤独感のほうが強くなってしまうので、締め切りがないものでないとまず始まりません。締め切りをつくってしまうと、何とかしなくてはという気になるので、好きでない活動もきっかけができます。 

  そこで、まずするのは、いいたいこととアウトラインをざっとドラフトすることです。いくら考えていても、実際に紙に書かないと、安心できないので、「何がいいたいのか」「どういうか」というアウトラインをまず書くことによって、一応このプロジェクトを立ち上げてしまうのです。大体これが決まると、一時的ですが、心が落ち着いて、焦燥感、恐怖感は少しなくなります。またそのアウトラインやメッセージが頭の片隅にあるので、それから見たことや聞いたことに刺激されて、アイディアが出ることもあります。それからまとまった時間を探して(最低でも半日)、ドラフトを書き始めます。しかし、書くことは集中力がいるので、私の場合は、何時間もぶっ続けではできません。考えながら、少し書き、また休んで、また書くというプロセスを繰り返します。そうして何度も書き直したり、追加したりしながら進めるのですが、だんだん言いたいことがわかってきたら、今度は結論から書き始めます。結論がはっきりすれば、その前に書いた部分を整理して、カットする部分、追加する部分がだんだんわかってきます。このようにして、何度も書き直していきます。

  また私がよく使う方法は、ある程度ドラフトができた段階で、周囲の人に読んでもらうという方法です。皆忙しいのに時間を使っていただくので申し訳ないとは思うのですが、ずっと一人で考えていると、全体が見えない、ある点にこだわりが強くなりすぎる、読んだ人がわからないことを書いてしまうことが良くあります。そこで、出版社の方や仲間、一緒に仕事をしているスタッフにドラフトを読んでもらい、コメントをしてもらうのです。  

  私には、こうしたコメントをしてくれる人が何人かいます。そして、いただくコメントはとても貴重なことが多く、また新たな気持ちで書くことに向かう力にもなります。そうして、また原稿を何度か直し、というプロセスを繰り返すのです。こうしたプロセスは、それほど長いものでなければ、かなり前から準備作業をして書けば、何とか完成することができます。(私は「書きためておく」人ではありませんが、締め切りが決まると、ほとんどの場合それをクリアします。締め切りに遅れるということはほとんどないことだけがとりえともいえるかもしれません!ーー本については、こういかないので、苦労しています!)

  しかし、こうしたプロセスは、本全体を自分で書くとなると、ほとんど通用しません。本は全く別の世界であり、全体の構成が鍵となることが多いです。(本については、また続きで。)

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コメント

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  • コメント (2)

    • 新良 幸太郎
    • 2008年 9月 07日

    石倉さん

    Darden2007卒の新良幸太郎です。
    世界で活躍し、常に発信を続ける石倉さんも悩み、苦しみながら書く努力をされているんですね。
    私自身、自分には書くことが向いていない、そう思って諦めかけていたところがありました。今回の文章を拝読し、自分自身に欠けていたのは恐怖に向き合う勇気と具体的な対策、焦らず続ける粘りだったのかと思い直し始めました。

    書くという作業は孤独で、話すときと違って受け手の反応が分からないため、不安になり、手が止まることが多々あります。でも、他の人に積極的に見てもらうことでかなりの部分、不安は解消できますね。盲点でした。

    非常に力づけられるコメントでした。
    いつも勉強になります。ありがとうございます。

    • yishikura
    • 2008年 9月 07日

    新良さん、石倉です。コメントありがとうございます。

    私は「オープン・システム・イノベーション」ではないですが、まわりの人と協働していろいろやろうと、最近は特に意識しています。もちろん一人でやらなくてはならないこともありますが(考えるのは一人でやらないと駄目ですが)、周囲の知恵を借りることも同時にできます。

    これは「世界級キャリアのつくり方」を書いている時に、途中まで書いていきづまってしまい、それなら、ということで、数人の友人をよんで、そこまでの構成を説明し、どうしたら良いか?と聞いたことが大きなきっかけになっています。

    試してみてください。

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