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 梅田望夫さんの新しいご本「シリコンバレーから将棋を観る」を読みました。=>For  English

  梅田さんのブログやご本、将棋の羽生さん佐藤さんなどを少し存じ上げていること、将棋(できないのですが)自体に何となく心ひかれていることなどから、このご本はとても楽しみにしていました。

 とてもInsightful でInspiringな本だと思いました。(私の語彙が貧しいので、もっとぴったりした言葉が探せたら良いのですが)。これまで、将棋の観戦記やタイトル戦のライブのブログ(最近はタイトル戦によっては、いろいろ書いてあって、将棋ができなくても楽しいものー前夜祭、昼食、おやつから、終わった後のコメントなど、ごく最近はビデオで見られるものーがたくさんあります)など、かなり読んでいたので、そういえばこのコメント(おもに棋士の人たちのコメント)は前に読んだなあと思い出したものもありましたが、新たに次の言葉に目をひかれました。

 まず、第一は、39ページから始まる「知のオープン化と勝つことの両立」です。これは最近、、私がいろいろ考えている(新しい本で苦労しているということもあります)こと、まさにそのものズバリだったからです。この言葉にぶつかった時はかなりのショックでした。それは、「そうか、羽生さんはオープン化と勝つことを両立させているのだ」ということがはっきりわかったからです。

 私は「オープン化」(それが企業や大学の知的資産であればなおさら)はどんどん進めるべきだと思っているのですが、オープンにする中、どうやって新たな価値を創造し続け、それを提供するか、という所がとても難しく、企業には自社の強みをオープンにしたら競争優位性がなくなってしまう、大学などでは、フリーテキスト化や教材や講義をすべてオープンにすると、権利の問題がある、常に新しいことをやらねばならない、本当に自分にできるのか?という疑問が常に提起され、その対応方法、実際はどうか、がはっきりとは見えなかったからです。

 第2に心に残ったのは、32ページから始まる「イノベーションを封じる村社会的言説」にある羽生さんのコメント「。。若い人たちの将棋は極力意識してみるようにしています」というもので、何となく、とても気になっていました。

 実際、ここの部分を読んだ数日後に、ある会合で、初めて参加した若い世代(その会合の参加者の中では)が、それまでには全く出なかったとても斬新かつかなり大胆なコメントをしたのを聞きました。その時に、「盤上の自由というのは、たぶんこういうことなのだ」「意識して、新しい見方、考え方に触れなくてはいけないのだ」と痛感したのです。

 もうひとつは、第7章の対談の中で何度か出てくる「あいまいさ、揺れ動く、将棋の指し手をきめていくのは常に手ごたえのないもの、手ごたえのある差し方は基本的にできない。。。」という部分です。最近特に、「世の中には正しい答えがひとつあり、そこの向かって一直線に進む」という考え方は根本的に違う、と私自身深く思っているので、このコメントはとてもInspiringであり、勇気づけられるものでした。私が良く引用するSteve JobsのConnecting Dotsの話も同じようなことだと思いますが、私は「今私たちが直面している問題は問題自体がはっきりしない、解決案はさらにはっきりしないので、いろいろやっているうちに少しずつ道が見えてくる。一方、落とし所がはっきりしていて、そこまで最短距離で行こうというのはそもそもできない。いくら無駄のように見えても、いろいろためしてみる、考えてみるその努力を惜しむことはできない」と考えています。(なかなかそれを説明するのも難しいですし、実践するのは難しいのですが。。) 梅田さんと羽生さんの間でこうした話が何度も出てきたのは、とても印象的でした。

 こうして「将棋」をITの時代から、そして過去の歴史から(升田さん、金子さんの話)、さらには将来にまでわたる広い範囲から語ったこの本はすばらしいと思います。この本を読んでいると、梅田さんがどれだけ将棋が好きか、が感じられます。そして、将棋が指せなくてもおもしろさがわかること(少なくともそうらしいこと)を、多くのひと(私も含めて)に知らせてくださっているからです。同時に、羽生さん、佐藤さん、深浦さん、渡辺さんのパーソナリティやスタイルが眼に見えるようで(勝手に想像しているのですが)、読んでいて楽しい本でした。

 さらに、「将棋」というものの想像を絶するような深さと広がり、日本の財産としてのすばらしさ、これを世界にわかるように知らせることの必要性を今まで以上に感じました。以前から「将棋を世界に知らせたい」と何となく思っていたのですが、「今の時代の先端的な実験場である将棋」という位置づけで知らせることができるのではないか、と強く思いました。(私は、何でもすぐ「その気」になってしまうので、今年の夏は、将棋を少しでも知りたいなあーおやつや昼食メニュー、棋士のコメントの感じを読むだけでなくーと思っています)

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コメント

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  • コメント (4)

    • uamagata
    • 2009年 4月 27日

    >最近特に、「世の中には正しい答えがひとつあり、そこの向かって一直線に進む」という考え方は根本的に違う、と私自身深く思っているので、このコメントはとてもInspiringであり、勇気づけられるものでした。

    囲碁将棋の愛好者です。将棋も学問もどこか通じるところがあるのですね。
    遊びという世界もおなじことがいえるのでしょう。

  1.  「将棋の海外伝播などについてのブログ」を書いている者です。最後のパラグラフを拝読してコメントを残そうと思い立ちました。

     昨年の9月以来、動画共有サイトのYouTube に、How to Play Shogi(将棋)という将棋のレッスンビデオを英語で40本発表している仲間が居て、Lesson#1 の view数はほぼ2万 viewsに達し、ビデオそれぞれのコメント欄は海外からの絶賛の声で埋まっています。海外にも知人が多い方とお見受けしますが、もしよろしければ、このビデオの存在を時間のあるときなどにそれらの方々にお知らせいただければ幸甚です。

    How to Play Shogi(将棋)
    http://www.youtube.com/view_play_list?p=587865CAE59EB84A

    • yishikura
    • 2009年 4月 30日

    umagata さん、石倉です。コメントありがとうございます。そうですね。最近特に、全然違う分野にも共通する点があることを感じます。興味深いですね。

    • yishikura
    • 2009年 4月 30日

    takodoriさん、石倉です。とても興味深いビデオを教えていただき、ありがとうございました。さっそくちょっと見てみました。私もやってみようかなあという気になります。

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